[音楽]

中島みゆき「五月の陽ざし」と僕のどんぐり / 2013-05-01 (水)

中島みゆきの「ララバイSINGER」の中に「五月の陽ざし」という佳曲がある。



もう35年も前のバレンタインデーに僕に贈り物をくれた女の子がいた。僕らが中学二年生の時。
卒業式の時にもメッセージを書いて欲しいとノートを渡されたので多分2年近くも僕のことを見てくれていたんだろうと思う。
でも僕は、黙って逃げ出してしまった。

透き通るような清潔感がある美しい女の子だった。
僕はと言えば、喘息持ちで顔色は悪く、猫背で成績も良くない、まるで冴えない惨めな男子生徒だった。
なぜこんな僕に、と思った。とても釣り合わないような気がした。
だから、おじけづいて放り出してしまった。

でも今はわかる。
彼女が僕にくれたのは、どんぐりだったんだ。
だから一言、「ありがとう」でよかったのにね。

もしその素直な一言が言えていたら、ひょっとしたらそのどんぐりは、青々と葉を茂らせる大きな木になっていたかも知れない。
でも、すでに時は過ぎたね。



中学を卒業して、別々の高校へ行って、顔を合わせることもなくなって、たぶん彼女は他の男の子を好きになって、僕のことはすっかり忘れてしまったんじゃないかと思う。
でも僕は、35年間、君がくれたどんぐりを一番大切な宝物にしてきた。
そしてそのどんぐりは年を経るごとに光りを増すようになって、今「五月の陽ざし」の中でこれを書いている。

「ありがとう」でよかったのにね
どんぐりにまで気の毒なことをしました

(2013.5.1)